ピアノは引き算である

今回のお話は少し難しい内容になります。

ロシアピアニズムの一つである「重力奏法」につながるのですが、レッスンでも大変時間をかけて説明する内容となっています。ブログでは実演で説明することができず、加えて文才のない私が上手く文章にできるか不安なのですが、やってみたいと思います。疑問のある方、もっと詳しく知りたい方は、遠慮なくご連絡ください。

 

【ピアノは引き算である】

まず、多くの方がピアノは足し算だと思っています。どういう事かといいますと、例えば、弱い音(p,pp)は少しの力を加える、大きい音(f,ff)は多くの力を加える、というように。

ですが、ピアノという楽器は横に鍵盤を押し込む楽器ではありません。腕や手や指を縦に落下させる楽器なのです。

 

そして、この世界には重力が存在しています。つまり私達はその重力に反して(自らその重力というパワーに抵抗しながら)ピアノを演奏することになります。例えばピアノを弾く前に鍵盤に手を構えるだけで、その重力に逆らっているのです。

 

ピアノは引き算であるというのは、そもそも存在する重力のパワーを意識して、そこからコントロールしようということです。重力を活用すれば、実は大きい音の方が多くの力を加える必要がないことに気付きます。なぜなら重力に逆らわず腕や手を落下させると、その凄まじいスピードで大音量が鳴るので。大きい音を出す時は重力のパワーに逆らわずに鳴らし、逆に小さい音を出したい時は重力のパワーに抵抗してすでに存在するパワーから引き算をしながら音を鳴らします。結果、小さい音を鳴らす時の方が自らの力は働いていることになります。自らの力が働くことと、音量には反比例の関係があると思って下さい。

今回は音量について焦点を当てましたが、これに音色といったとても大事な部分が関わってきます。とりあえず今回は音を鳴らす仕組みについてなんとなく理解してもらえたらと思います。

 

最後に私のロシアでの先生の言葉より、

「ピアノの演奏は、大きい音を出していけばいくほど身体は自由に楽に、なんの力も入っていない脱力状態になっていく。それはまるでお茶をしながらくつろいでいるかのような気分だ」