ショパンの運指法

皆さん、現在行われているショパン国際ピアノコンクールで寝不足気味になっていないでしょうか?

ちょうど1次までが終わり、日本人の活躍、大変嬉しいニュースですね。


本日は、ピアノの「運指法」について、ショパンの考えをいくつかご紹介します。

まず、運指法には、指使いはもちろん、手の角度やポジション、手の運び方などすべてを含みます。



①音階の基本はハ長調ではない。


音階練習で一番多く弾く機会が多いのは、やはりハ長調でしょう。まず最初に取り組むし、何よりすべて白鍵で弾きやすいし。

しかし、運指法の観点からは、ホ長調やロ長調が基本になります。これらは手が自然に動く形であり、ショパンは生徒達にまずはこれらの音階(他に嬰ヘ長調、変ニ長調)から始めさせていました。

具体的に説明しますと、これらの音階は、長い指(2, 3, 4)がちょうど黒鍵を通るのです。

ということは、ハ長調は指の運びから見ると、長い指を折り曲げないといけないので、弾きにくい音階だと言えます。



②手の中心は中指でなく、人差し指である。


これはロシアピアニズムのひとつの特徴なのですが、実はショパンの時代から考えられ、また彼もこのことをじゅうぶん理解していました。

見た目では中指が手の真ん中に当たるので、ピアノを弾くときには無意識に中指が中心になるようにポジションをとってしまいますが、本来は人差し指が中心にくるようなポジションをとらなければなりません。

理由はたくさんあり、ここですべてを説明するのは難しいのですが、ひとつ1と5の指に注目してみましょう。中指と人差し指、どちらを中心に手のポジションを取れば、1と5の指が平行になるでしょうか?、おそらく人差し指の方ではないでしょうか?

ショパンの英雄ポロネーズの中間部や、エチュードの作品25-10を弾くとき、この理論を知っとおくと、ぐっと弾きやすくなりますよ。



③指はそもそも均等ではない。


実はショパンの時代、当時のピアノ教師達は、無理な練習を重ねて強制的に指を均等にしようとしていました。現在でもこれはハノンの間違った使い方などによって、すべての指から均等な音が出るように、まるでスポーツの特訓のようになってしまっている場面が多々あります。

しかし、ショパンは指はもともと不均等である事を理解し、それぞれの指の個性から多様な響きが生み出されると考えていたのです。


「指が違うほどに、響きも違う」



いかがでしたでしょうか。

私の生徒達にとっては「耳タコだよ〜!」と思われた方もいらっしゃると思いますが、是非譜読みの時に少しでも役立ててもらえたら幸いです。