先生とは誰か?

北京オリンピックが始まりましたね。

選手達にとっては、感染対策など競技以外の面でも気を遣わないといけない場面があると思いますが、最後まで全力で戦ってきてほしいです。時間がある時に、画面越しではありますがエールを送りたいと思います。


さて、半年前の東京オリンピックの話になりますが、アナ・キーゼンホファーという選手をご存知でしょうか?

他の競技に比べて注目度が低かったので、あまり知られていないと思いますが、自転車女子個人ロードレースの金メダリストです。

世界ランキング94位の選手が金メダルを取る番狂わせ、という形でちょっとしたニュースになりましたが、もうひとつ我々を驚かせたことがありました。それは、彼女にはコーチやスタッフなどがおらず、トレーニングの計画や食事管理などを全て彼女自身で行っていたことでした。

「自分のことを自分でやる方が好きだから」とその理由を明かしていましたが、「自分自身が自分の上司であることを楽しんでいる」との言葉には深く考えさせられました。


ピアノの場合、他の習い事(例えば水泳、バレエ、ダンス、英会話)に比べて取り組まなければならない時間がどうしても多くなりますよね。

なので、いかに今の練習が正しい方向で行われているかの判断を、「自分自身」で毎日分析することが非常に大切になってきます。

私はレッスンの時、「練習は数学的思考で」とよく口にするのですが、これはこのようなことからでもあります。その日の練習の目標を立て、計画し、色々な手段を用いて達成していく。まるで今日の練習のメニューを考えるトレーナーが自分の中にもう1人いるような感覚ですね。


しかし音楽というのはイメージや直感が非常に大切であり、音楽の属性と練習の仕方では考え方や使う脳の種類が別である所にピアノの練習の難しさがあるのかもしれません。


ここは思い切って自分を分割し、今から練習する自分と、それを聴いてアドバイスする自分、と2人の人間がいるのだ、と思ってみるのはどうでしょうか。


自分にとっての先生はまずは「自分自身」であり、その先生がおそらく人生で9割以上、自分の演奏を聴いているはずです。(ここではレッスンでの先生と比較した場合の表現)



ちなみに本日ご紹介したアナ・キーゼンホファーは実は数学者である、というのもどこか面白い事実です。