様々なイメージ

「この痛ましい幻影は芸術の域を超えている」


これは、フランツ・リストがショパンの「幻想ポロネーズ」を評した際の言葉です。


この作品は冒頭から不思議な体験が待っています。変イ長調なのに最初の和音は♭Aマイナーから始まり、直後♭Cメジャーに落ち着きますが、そのコードが今度は分散されたパッセージになり上行していきます。

この場面は何なのでしょう??


おそらくポロネーズが実際に動き出す第1テーマまでの約2分の間だけでも、人によって全く違った解釈、演奏になるでしょう。


私が昔この曲に取り組んだ際は、この冒頭を戦場とイメージしていました。冷たく暗く孤独な場所に漂う死者の魂です。その魂が安らぎを求め天に向かう様子を音に具現化し、上行する分散コードに込めました。



なぜ今回この「幻想ポロネーズ」を取り上げたかと言うと、2025年のショパン国際ピアノコンクールのファイナルラウンドに、ピアノ協奏曲だけでなく、この「幻想ポロネーズ」が課題曲として選ばれたからです。

これは大変面白い試みだと思います。

先に述べたように、ショパンの作品でもこれほど解釈の分かれる曲はないでしょう。

それを色々なピアニストの演奏で聴ける機会を今から楽しみにしていましょう!!